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アパート

第7章 人間もよう

おじさんに沙耶香のことを聞かれ、僕は、

「男とはあまり付き合ってはいけないみたいなことは聞いたことがあります。」

と言うと、おじさんは、

「あの子はちょっと変わったところがあって、男と付き合うとまともな生活ができなくなるんだ!だから、今は、あの子の親とカウンセリングの先生と私で見守っているんだよね!今彼女は、介護の仕事をしながら普通に生活できているので、その生活を崩したくないんだ!君が悪い訳ではないが、彼女とはもうあまり接しないで欲しい!会っても挨拶程度にして欲しいんだ!」

と言った。ちょうどその頃、女の人がコーヒーを2つ持ってきて置いた。

おじさんは、常連なのか、

「ありがとう!いつも悪いね!」

と言った。そして、女の人が立ち去ると話を戻し、

「わかってくれるかな?彼女はなんというか精神の病気で、ある程度生活に制限を設けておかないと、切れたタコのようにどこかへ行ってしまい、まともな生活が送れなくなるんだ!それが何回も続いたため、親からの依頼で精神科の先生に相談して、元々彼女の親と私も友人だったので私のアパートで見守っているということなんだ!今、彼女は普通に仕事をして、他の資格も取る為に勉強もしている。この生活を壊したくないんだ!」

と言った。僕は、その話を聞いて、たぶん僕が立ち入る領域はそこにないんだと思った。

彼女の親と、元精神科の先生と、このアパートの大家のおじさんでガッチリスクラムを組んで彼女の生活を支えているってことなんだ。元精神科の先生の彼女に対する性的な行動も、彼女の性的な欲求を抑えるための必要な行動かもしれない。

おじさんは続けて、

「君は君で、別の人生を歩んで欲しい!」

と言った。僕はそこまで言われると、

「分かりました!」

と言うしかなかった。おじさんは、

「分かってくれるか?すまんな!挨拶程度なら今まで通りよろしくお願いしたい!」

と言った。僕は、なんか凄く寂しく感じた。もう沙耶香と話をしてはいけないということなのだ。おそらく沙耶香もそう言われて、僕には会わないようにしているんだと思った。

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