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マッチ売りの少女と死神さん

第3章 1月1日…死神さんに注がれています

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廊下の突き当りにある階段から下に降りていく。
知人や友人と新年を過ごすつもりなのか。 食堂は比較的多くの人でにぎわっていた。

窓際に空いている席を見付け、ホーリーとサラの二人がテーブルを挟み椅子に腰掛ける。

「19世紀のデンマークかあ。 この辺りの年始って、海鮮や焼き菓子を食べるっていうねえ? 僕は知らないものは出せないからさ。 好きなものを食べるといいよお」

「あ、はい。 ありがとうございます……」

ホーリーが余りにも何事も無かったように振る舞うのでサラは戸惑った。
サラ自身、あるまじき姿を彼に晒してしまったように思っていたため、ホーリーの態度は有難かった。

それに、まるで外からやってきたような彼の物言いだがホーリーは実際そうなのだとサラは改めて納得した。 するとなぜか今のこの光景が虚構のようにも思えるのだった。 まるでマッチを擦ったら出てくる魔法のように。

ホーリーはサラにメニューを渡すと、すりガラス越しに外へと目をやった。
サラも外を覗いてみたがやはりいつもより人出が多いようだ。

(外食なんていつぶりかしら?)

サラはキョロキョロと周りを見渡した。
急に、いかにも貧しそうな自分の身なりが気になった。
少しだけ襟元を正し衣服の汚れなどをチェックしていると、頬杖をついたホーリーがこちらを見ている。

「なんですか?」

「気にしないでいいよお」

(気になります)

「あ、やっぱり少しだけ気にして欲しいかなあ?」

「……どんな風に気にすればいいんですか」

「ん…あのさ。 僕が見たら、こう、チラッとこっちを見てくれる?」

「チラッと……?」

「あっ、その上目遣いはゴメン。 アレがカタくなるから」

「………」

「い、いいよお、それ! 蔑んだ冷たい目…っ」

「こんなとこでハアハア息荒くしないでください」

「ハアッ……屋外プレイもいいよねえ…ふ、ふふ」

ホーリーは恍惚とした表情でサラを眺めている。

(………本当にこの人、大丈夫なのかしら …それにしてもさっきはあんなに、私の)

なんとなくその続きを思い起こしてしまったサラが、またしても真っ赤になって固まった。

「サラちゃんも外で楽しそうだねえ?」

彼が目の前でニヤニヤしていた。

(……なんだか憎たらしいわ)


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