
マッチ売りの少女と死神さん
第7章 1月3日…ただ触れていたいから
自分は生涯ホーリーを忘れないのだと、サラには絶対の自信があった。
(ああ、でも。 私がホーリーさんに与えられたものに対して、私はこんなことしか出来ないの?)
その事実が悲しく悔しかった。
「ホーリーさんは私なんかと違って、やるべき大事なことがあるんですから……お仕事をする人がいなくなると、たくさんの人が生まれなくなるって言っていたのに、それを放り出すなんて良くないです」
「何でサラちゃんがそんなこと言うの?」
「え……何でって、だって、ホーリーさんはきっと後悔するもの」
(優しい人だから)
そう言おうとしたサラが口をつぐむ。
サラをじっと見据える彼の目は明らかに気分を害していた。
「何も知らないくせに」
「そ、れはっ…ホーリーさんがちっとも教えてくれないからじゃないですか。 私のことは聞きたがるのに」
「知ってもどうにもならないことなら、知らない方が」
「それは私が決めます!」
きっぱりと彼を遮ったホーリーが目を見張った。
ややして、彼の手を握っているのと違う腕があがり、指がサラの頬を撫でた。
「……珍しく、泣いてない」
本当は泣きそうだった。
この場にそぐわなく、彼が嬉しそうに笑っていたからだ。
「わ、私…は、頑張ります。 辛さや寂しさから逃げません…から」
ホーリーが起き上がり、小さく息を吐く。
「だろうねえ」
「だからホーリーさんも」
