
マッチ売りの少女と死神さん
第5章 1月2日…だからってXXは無理です
「あそこの部屋を予約されてから、一昨日ようやくチェックインされたのですね。 前金をいただいたのは、お父様でしょうか。 今まではどこかご旅行で?」
サラと歩いていた宿の人が、ホーリーから聞かされていない内容を話し始めた。
その度に「ええ!」「は、はい」と曖昧なあいづちを返し、一階にある電話へと向かう。
(私に電話なんて初めてだわ。 うちにも無いし)
電話という高価なものは普通、お店や裕福な家にしか置いていない。
サラはフロントに立っていた宿の人から、ぎこちなく受話器を受け取ると、それを両手で持ち目の前にかかげて話し始めた。
「こんにちは、サラ・オルセンです!」
フロントの人が、さりげなくサラの方を見ては笑いそうになっていたので顔が熱くなった。
だがサラは頑張って気にしないことにした。
『サラさん、どうも昨日は。 ええ、不躾な真似をしてすみません。 実はホテルの場所を娘から聞いていたので、お調べさせていただいたのですよ』
落ち着いた声で話し始めたローラの父親………クラース氏だった。
廊下の窓から見える外は、晴れているようだった。
電話を終えてフロントから戻り、宿の部屋に足を踏みいれたサラは、どこかすっきりしない表情をしていた。
「……ただいま…戻りました。 って、あれ。 ホーリーさん、なに遊んでるんですか?」
テーブルや周りの床の上に、様々なものが散乱していた。
ざっと室内を見渡しただけでも、シーツや壁掛け、何かの葉っぱや棒や石ころ、布やぶどう酒の瓶や木。
自称綺麗好きのホーリーにしては、ひどい散らかりようだった。
その真ん中に、脚を組んだ彼が地べたに座っている。
「そっちこそ、何の用事だったのお?」
膝の上に片肘をついたホーリーがサラに訊いてくる。
「それが私にもよく分からないんですけど」
サラが当惑した顔で話し始めた。
