クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第10章 ムーンブレイド
マリナは抱かれながら意外と冷静だった
“あぁ、彼はこんな表情をするんだ?
そんなに一生懸命な顔をしちゃって!
そんなふうに触るんだねぇ?
私も少しは攻めてみようかな?
ここが良いみたいね?
それとも、こう?
あらあら我慢できなくなって急に飛びかかってきたわね
あぁ、いつもあの子にもこんな風にしてるのかしら?”
そんなふうに客観視してしまったワンナイトラブ
終わったあと、彼がゴメンと言ってそそくさと帰ってしまったことでアンナも急激に醒めてしまった
憧れというのは憧れのままのほうが楽しかった
一度だけとは言え、手に入れてしまうともう以前ほどの熱量が湧き出てこない
こんなものか、と達観した気分になりアンナは就職する予定の勤務先を自分からキャンセルしてアルメニアの軍へ入隊した
もっと自分のウチなるものから湧き出るものを求めて
“どうして今頃あんな昔のことを思い出したのだろう?”
しかし、まんざらでもない
この胎内に居るかのような感覚、これはあのとき身体を寄せ合った感覚と似ている気がする
セックスそのものというより、なにかと一体化して溶け込むような感覚に
“……そうか、これは誰かが操っている機体だな?その中に私が潜り込んでしまったようだ
このパイロット、まるで機体のすみずみまで支配しているぐらい融合しているんだッ”
マリナはこの機体、このパイロットが一般兵士でないことがわかってきた
あのシグナルの目標人物、バイクを奪ってここまで逃走してきた男がこの機体のパイロットなのだろう
確かに特殊な存在のようだ
生け捕りを望む上の命令もおそらく当たりだ
アンナは警戒しながら通路を進み、自分がいちばん彼を確保できる位置まで届いていることに震える
“さぁ、追い詰めて手柄をたてよう!
手柄を手にして故郷に戻るとあの時の彼は何というかな?”
マリナはウチから湧き出る余韻に何度も震えるのだった……
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える