クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第10章 ムーンブレイド
マリナ・アルテナは一瞬気絶していた
あたりを見渡すと通路の明かりがチカチカするものの来た道は塞がれてしまっていた
まだパラパラと天井からの瓦礫が落ちている様子からしてそう時間はたたっていなさそうだ
「ちっ、隊長とはぐれちまったようだね」
退路をふさがれた以上、前に進むしかなかった
幸運なことに先ほど来たときにはロックされていたゲートが開いている
しめた!とアンナは隙間から中に忍び込んだ
中の狭い通路はまっすぐ伸びている
施設の廊下というには狭すぎる
まるで船の通路のようだ
腰のピストルを手にしながらゆっくり進む
“……誰かに見られている?”
アンナはふいに視線を感じた
あたりを見回しても監視カメラのようなものはみつから無いのだが、周囲から見定められているような感覚になる
まるで大きな動物の胎内に入ってしまったかのような感覚
そう、視線というのではなく自分のまわりに人の気配がするのだ
“わたしは身体がミクロサイズになって誰かの身体の中に取り込まれた”とでも言うように
マリナはふと昔の男の顔を思い出した
それはまだアルメニアの軍組織に入る前、
まだ学生の時のころ好きだった相手だ
彼には交際していた相手が居るのを知っていたが、マリナのほうから声をかけた
別に彼女に成り変わろうとまでは思ってなかった
彼の交際相手は誰にもやさしい女性だったし、誰もが認めるカップルでもあったから
単純に自分の気持ちを終わらせたくなかった
それは自分勝手だと思う
それでもこの人を乗り越えなければ次の恋に進めない気がした
チャンスは案外簡単にやって来た
彼の交際相手から相談を持ちかけられ、いま彼と仲違いしているというものだ
アンナはこの若いカップルのことは気に入っていたので、この時は彼をどうこうしようとは思ってなかった
ただ彼と話せる正当な理由が出来ただけで嬉しかったのだ
好意のある彼と話すのは楽しかった
そしてしっかり彼女の意思も伝えてやった
そのうえでアンナは彼を寝とった
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