
碧と朝陽
第19章 猫カフェ
にゃーーん
大きな瞳がこちらを見つめてくる。
「か、可愛いっっ」
大きな声は出さないように気をつけながら俺はつぶやいた。
「ふふ、そんなに猫好きだったんだ」
碧はニコニコとこちらを見る。
「こんなに可愛い生き物他にいないだろ!!」
膝のうえでごろごろと甘えた声をあげる猫の頭を撫でながら言う。
俺と碧は予定通りドリンクのサービスチケットを持って猫カフェに来ている。
猫は気分屋だ。
触らせてもらえなくていい、せめて眺めるだけでも!と来店したが、どの子もびっくりするくらい人馴れしていて人懐っこい。
「ここは楽園だ……」
もふもふの天使を眺め、俺はほうっとため息をこぼす。
「マロンちゃんって言うんですよ、茶色い毛並みが可愛いですよね」
ふと店員さんに話しかけられる。
「え!あ!はい!すっごく可愛いです!」
俺がびっくりしながらも、笑顔で返すと、店員さんもにこりと笑って「ごゆっくりどうぞ」とその場を離れていった。
「浮気者」
「ひゃっ!!!」
急に碧が耳のそばでそう呟くものだから、変な声が出てしまい、それに驚いたマロンちゃんは逃げていってしまう。
「あぁ、マロンちゃん………」
俺が残念そうに呟くと、ごめんごめんと碧は申し訳なさそうに謝る。
むっとした顔を碧に向けると、逆効果だったようだ。
「ふっくくっ、ほんと猫好きなんだね、可愛い」
そういって笑う碧は、特に猫には興味がないようだった。
俺ばかり見て、時々からかっては楽しそうに笑う。
「俺のこと大好きかよ……」
ぽそりと碧には聞こえないように呟く。
プレイだけじゃなく、碧といると落ち着くし安心する。
体調もずいぶん良くなった。
碧の真剣な気持ちにも気づいていて、それなのに俺はそれを利用して一緒にいる。
そろそろ俺も自分の気持ちを誤魔化すのが難しくなってきた。
ただ、俺は、どうしても自分がパートナーを作ることを許せない理由がある。
