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碧と朝陽

第18章 朝

碧side

………いい香りがする。

目を覚ますと、隣に朝陽はいない。
代わりに珈琲のいい香りが漂っていた。

体を起こすとキッチンにいる朝陽と目が合う。

「碧、おはよう」

ぎこちない挨拶。

昨日のこと気にしてるんだろうと思うと愛らしくてたまらなかった。

「ん〜朝陽おはよう〜。珈琲?」

なるべく自然に、いつものように柔らかく朝陽に声をかける。

「うん、好きだろ?」

俺のために淹れてくれてるのか。

「好き、大好き、ありがとう」

俺がそう言うと、朝陽はぽっと顔を赤らめて目を逸らした。

「ん……」

そんな朝陽を見ていると、揶揄いたい欲が沸々と湧いてくる。俺は性格が悪い。

キッチンにいる朝陽のそばに行くと後ろに回る。

不思議そうにしている朝陽の腰に手を回して、肩に自分の顎を乗せた。

「っ!?」

戸惑い驚く朝陽には構わず、耳元で言う。

「何、照れてんの?」

「て、照れてなんてないっからっ!!!離れろよ!!今手が離せないんだ!」

朝陽は珈琲だけでなく、朝ご飯の用意までしてくれているようで、卵をかき混ぜていた。

「たまご?」

「ふ、フレンチトースト……甘いの食べたくて」

「え、フレンチトーストなんて作れるの!」

意外なメニューに俺は素直に驚いた。
料理得意なんだな。

「簡単だ。レシピ見れば誰でも作れる。ほら、もうどいて…」

朝陽は食パンを取ろうと俺の手から逃れる。
が、俺はすぐにまた背中に引っ付き、料理の邪魔をした。

朝陽には「いつもの倍時間がかかった!」と文句を言われたが、出来上がったフレンチトーストは珈琲にもよく合い、甘くてあったかくてとても美味しかった。

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