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ふざけた奴等

第1章 鹿は馬より速いはず

 さて、と。
 昼休みのチャイムを頭上に廊下を歩く。
 広報委員の打ち合わせダリい。
 上履きを引きずる。
「なぐっちー! オツカレーパン!」
 顔面にパンの袋が飛んでくるのを寸前でかわす。
「ああっ、オレの!」
 こたろんが手を伸ばした先にりーやんが駆けつけた。
「華麗に僕がキャッチ! カレーだけに!」
「頼むから廊下で恥をかかすんじゃねえっ」
 こいつらには人の目線とか見えないのか。
 カレーパンがこたろんにパスされる。
「ナイスりーやん!」
「よくそんな安いもん食えるよねー」
「何てうざいお坊ちゃん!」
 笠羽ね。
 あのお屋敷は知らない人はいない。
 執事もいたな。
 こう、オールバックの白髪で髭も。
 和か洋かわかんねえし。
「あ、家からだ。もしもし、金さん?」
「執事からかよ」
 がぶっとパンにかじりつく。
「廊下で食うなよ」
「うまっ」
「まじ? 一口」
「あーん」
「……あ」
 歯形の残った断面をかじる。
 こたろんは俺より五センチ低いから、手を上げて。
 なんとなくその頭を撫でる。
「んなっ、ワシャワシャやめろ!」
「撫でやすい位置にいるなあって」
「りーやん! なぐっちがバカにする!」
 会話中のりーやんは、携帯を耳から外さず口に人差し指を当てた。

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