
ふざけた奴等
第1章 鹿は馬より速いはず
授業の支度を済ませて担任が入ってくる扉を見つめる。
「なあ、黒板落としってあるだろ」
隣の席の小太郎がひそひそと言う。
「黒板落としてどうすんの。黒板消しね」
「違う違う。扉のすきまに挟んどくブービートラップバーンみたいなやつ」
意味あってるっけ。
「こういう連休明けの微妙な時こそハセンセ確実油断してる訳だろ? だから、仕掛けてみた」
そう言って指で示した方向を見上げると、扉の微妙な小さい隙間にだらりと顔らしき刺繍の施された赤と緑の布が垂れている。
「なにあれ、気持ちわる」
「いやいや、鯉のぼりだぞっ」
「あの配置じゃ滝昇れないでしょ」
鱗の模様が煌めく。
悲惨だ……
せめて外に飛ばしてやろうよ。
「とまあ、五月にちなんでみたんだけど」
至極楽しそうな小太郎の後ろで扉が開く。
きた。
同時に担任に注目する。
「席着けー」
「あ」
「あら」
鯉はふわふわと長谷先生の背中に舞い落ちた。
小太郎が目を見開きながら僕に無言で訴える。
「ま、だろうね」
「布じゃん!」
「布だね」
「おせえじゃん!」
「気づくのもね」
チャイムが鳴る前に、ちゃんと回収しに行った。
「なあ、黒板落としってあるだろ」
隣の席の小太郎がひそひそと言う。
「黒板落としてどうすんの。黒板消しね」
「違う違う。扉のすきまに挟んどくブービートラップバーンみたいなやつ」
意味あってるっけ。
「こういう連休明けの微妙な時こそハセンセ確実油断してる訳だろ? だから、仕掛けてみた」
そう言って指で示した方向を見上げると、扉の微妙な小さい隙間にだらりと顔らしき刺繍の施された赤と緑の布が垂れている。
「なにあれ、気持ちわる」
「いやいや、鯉のぼりだぞっ」
「あの配置じゃ滝昇れないでしょ」
鱗の模様が煌めく。
悲惨だ……
せめて外に飛ばしてやろうよ。
「とまあ、五月にちなんでみたんだけど」
至極楽しそうな小太郎の後ろで扉が開く。
きた。
同時に担任に注目する。
「席着けー」
「あ」
「あら」
鯉はふわふわと長谷先生の背中に舞い落ちた。
小太郎が目を見開きながら僕に無言で訴える。
「ま、だろうね」
「布じゃん!」
「布だね」
「おせえじゃん!」
「気づくのもね」
チャイムが鳴る前に、ちゃんと回収しに行った。
