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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 85 絶望の『望(のぞみ)』①

『Non B-styl』
 まだ看板が新しい美容室であった。

 私はその美容室に入る。

「いらっしゃいませ」
 若い、20台前半の女性スタッフが出迎えてくれる。

「え…と、ご予約のお客様ですか?」

「あ、いや、予約はしていないんだが…」
 どうやら完全予約制らしい…

「あ、うん、ダメならばいいよ」
 そう返した。
 どちらにせよ、気分転換の衝動的に入ったのだ。
 なにがなんでも…と、いう訳ではない。

 すると…
「あ、いえ、大丈夫ですよ」
 と、奥から声が聞こえてきた。

「あ、先生、でも…」
 どうやら、オーナーの先生の様である。

「大丈夫ですよ、ちょうど予約の隙間が少しありますし…」
 そう言いながら、私の髪を一瞥してくる。

「カットですよね?」 
 
 私は頷いた。

「うふ、なら大丈夫ですよ、どうぞこちらへ」
 そう言いながら目の前の席に案内してくれたのだ。

「あ、なんか申し訳ないですね」
 私はそう礼を言い、座る。

「わたしが切りますから…」
 と、さっきのスタッフに指示し、鏡を通して私の顔を見てきた。

「軽くサイドを刈り上げて、全体的に隙バサミ入れて立たせればよろしいんですよね…」

 私は、正に、今、そう言おうとしたのだ…

「え…」
 なぜ、分かったのか?…、と、私は鏡を通してそんな顔をする。

「うふ、昔と変わってないんですね…」 
 なんと先生と呼ばれる彼女がそう囁いてきた。

「え…」

 え、あ、誰だ?…

「わたしですよ、のぞみです、ノンですよ」

「あっ…」
 私は、急にドキドキしてきた。

「ノン…か」

「はい、ノンですよ、こうちゃん…」

 ここにもいた…

 ここにも元カノがいたのである。

 ノン…

 のぞみ…

 望…

 山下 望…

 そして、自称絶望の『望(のぞみ)』


「やだわぁ、22年振りになるのかなぁ…」

 22年振りの再会であった…






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