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　151　最後の夜（13）

「やだなぁ、なに泣きそうな顔してるのよぉ」

　そんな美冴さんの優しい言葉に僕は心震えてしまい、本当に泣きそうになってしまっていたのだ…

「えっ、あっ、す、すいま、あ、ごめんなさい…」
　思わず慌てて謝った。

「もお、やだわぁ、何で謝るのよぉ」
「えっ、で、でも、僕、寝ちゃって…」

「うふ、気絶する程気持ち良かったんでしょう？」
　少し妖艶な笑みである。

「あ、は、はい…」

　ドキドキドキドキ…

　僕はその妖艶な笑みに少しドキドキしてしまう。

「じゃあ良かったじゃないの、何で謝るのよお…」
「いや、だって、そのぉ…
　勝手に一人で舞い上がってしまい、あっという間にイッてしまったから…」

「ええ、だからわたしが怒ってるって？」
　僕は思わず頷いた。

「もお、その位で怒らないわよぉ、っていうかぁ、なんか、いつもわたしが怒っているみたいじゃないの…」
　と、口を尖らせながら言ってきたのだ。
　その顔は女神からかわいい女の子の顔になっていた。

「いや、そんな、いつも…なんて…
　す、すいません…」
「ほらぁ、また謝ったぁ…
　もお、これから和哉はごめんとすいません禁止ね」
「あ…は、はい、すいま…あ、はい…」

「ぷっ、ほらぁ、またぁ…」
　優しい笑みを浮かべながら笑ってきた。

　確かに本当だ…

　昨日から僕はいつも、美冴さんに謝ってばかりいるのかも…

「とりあえず、目覚まし代わりに露天風呂でも入ってきなさいよ」
「えっ…」
「気持ち良かったよ」
「あ、はい…」

「それにぃ、どうせぇまた…
　この後もヤるんでしょう？…」
　そして、やや恥ずかしそうな顔でそうも言ってきたのである。

「あっ、は、はいっ」
　僕はそんな美冴さんの天使の囁きの様な優しい言葉に救われたのだ。

　そしてその優しさに一気に気持ちが元気に蘇ってきたのである…
　堪らない美冴さんの思いやりのある優しさであった。

　それは男である僕の心を傷つけないようにとの、優しい気遣いなのだと感じたのである…