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シャイニーストッキング

第7章 絡まるストッキング6 和哉と美冴2

 123 美冴さんの言葉…

 えっ、そんなところが…って…

 ドキドキドキドキ…

 僕はそこで黙って見つめてくる美冴さんに、いや、その優しい目に、一気に胸がドキドキと高鳴って、心が昂ぶってしまったのである。

 ああ、あの頃の目だ…

 あの五年前のあの頃、いつも僕を見てくれていた優しいあの目だ…

 その時、僕と美冴さんの二人の間に流れている時間が止まったのだ、いや、違う、五年前に還ったのである。

 そして僕の脳裏には、

『和哉のそんなところが……』

 と、呟いた美冴さんの言葉が、ぐるぐると巡っていた…


「ふうぅ…」
 すると美冴さんはそう吐息を漏らし、視線を海水浴場へと動かした。
 そして僕もその視線の動きに吊られ、まるで金縛りが解けたかの様にふうっとカラダが楽になったのだ。

 二人して見つめ合ったのはほんの一瞬だったのだが、僕にはすごく長く感じたのである…

「ああ、ここは日没は見えないのね…」
 ふと、美冴さんが呟いた。

「そうですね、この海岸は完全に東向きですから…」
 そして西側は少し高台になっていて、有名なゴルフコースの松林が連なっているのだ。

「……って事は、夜明け、朝日が昇るのは見れる訳よねぇ…」
 更に呟いてきた。

「まあ、東向きですからね」

「そうかぁ…」
 時刻は夕方4時半を過ぎていて、西日がやや傾いていた。
 
 だから日没なのかな…

 僕は夕方だから、日没、サンセット、海に沈む夕陽が見たかったのかな…と、思ったのだ。

 すると美冴さんは少し考えている様子に海を見つめ
「うん、決めた」
 と、そう言った。

 そして…
「ごめん、ちょっとトイレね…」
 そう言って立ち上がり、トイレに歩いて行く。

 僕はそんな歩いて行く美しい後ろ姿を見つめてしまう…

 だが僕は、
『和哉のそんなところが……』
 って、さっき美冴さんがそう言いかけた次の言葉って何だろうか…
 と、気になって仕方がなかったのであった。

 ああ、もう少しで帰らなくちゃ…

 帰りたくないなぁ…

 僕は東京に帰る、イコール、この美冴さんとの奇跡の出会いのこのイベント的な再会が終わる…
 と、そう思えて仕方がなかったのである。

 終わりたくはないなぁ…





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