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シャイニーストッキング

第7章 絡まるストッキング6 和哉と美冴2

 108 ゆかりとの電話 ⑧

『えっ、あ、うん…』

 すると、ゆかりさんの口調と声のトーンがさっきまでのドライからウエットに変わったのだ。

 えっ、どっちが本当のゆかりさんなんだろうか…
 ふと、そう思った。

『本来は今日戻るはずだったんだけど、身内に急病人が出て急遽、帰省しちゃったのよ。
 それに亡くなった父親の10回忌の法事の予定も元々あって、なんだかんだ東京に戻るのが15日辺りらしいの…』
 急に、かなりトーンが下がったのだ。

「あら、そうなんですか…」

 確か大原本部長の実家は、わたしが結婚して住んでいた、そして和哉も住んでいた同じ田舎である北関東の県であった。
 わたしと和哉が住んでいたのは県庁所在地であり、大原本部長の田舎はその県では二番目の規模の街である。

「でも、そんなに遠くないですよね」
 そうなのだ、新幹線を利用すると30分位なのだ。
 だから新幹線通勤をしている人も最近はかなり多いと訊いていた。

『でもなんかぁ、実家と母親を弟夫婦にすっかり任せっきりなんで泊まるって…』
 更に寂しそうな声になっていく。

「あら、そうなんですか、だったら、わたしは明後日の夜からは空いてますから…」

『えっ、そうなの』

「あっ、はい、夜ならば大丈夫ですから…」
 わたしがそう言うと、急に声のトーンがあがったのである。

 さっきまであれ程ドライだったのに、どうやらかなり寂しかった様であったらしい…

『じゃあ、また、明後日あたりに電話してもよいのかしら』

 なんか、かわいい…
 わたしはそう思ってしまう。

「はい、ぜひ、電話待ってますから…」
 
 多分、男女関係にはドライなのかな…

 わたしはそう思いながら電話を切る。

「おやすみなさい…」

『おやすみ、ありがとう…』

 なんかゆかりさんの意外な一面を垣間見た様な気がしていた…

 そして…

 ヤラせちゃうか…

 なんか
『今更……』云々なんて格好付けて、へりくだっている自分が嫌になっていた。

 ま、とにかく明日の流れ次第であるが…

 なるようになれ…だ。






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