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シャイニーストッキング

第7章 絡まるストッキング6 和哉と美冴2

84 切れた緊張感

 ブー、ブー、ブー…

 ♬♪♩♪♩♬♩♪♬♪♩…

 予想外の、いや、絶妙なタイミングで心が弾み和やかにしてくれる様な『夢の国』のテーマソングが携帯電話の着信メロディとして流れてきたのだ。

「あ…、ぷっ、うふふ…」
 そしてわたしは思わずその着信メロディの、このタイミングでの絶妙な違和感に笑ってしまったのである。

 ブー、ブー、ブー…

 ♬♪♩♪♩♬♩♪♬♪♩…

「……す、すいません…」
 和哉は謝ってくる。
 その顔には照れた様な、苦笑いを浮かべていた。

 そしてわたし達二人は、その着信メロディによりお互いの昂ぶりからピンと張り詰めさせていた緊張の糸が切れた、いや、切らしてしまったのである。

「出ないの…」
 わたしはそう言い和哉を促した。

 多分、彼女さんの真実さんからの着信であろう…

 
 ブー、ブー、ブー、ブー…

「あっ…」
 すると今度はわたしの携帯電話の着信バイブが震えてきたのだ。

 あ、健太からかな…

 そう思い時間を確認すると、午後11時を過ぎたところであった。

 多分、11時という時間の区切りで電話を掛けてきたのであろう…

 遅過ぎず、そして決して早過ぎない、就寝前の彼氏、彼女の関係のお互いが会話をするには最適な時間といえる。

「あらっ…」
 すると携帯電話の着信のディスプレイを確認するとその着信は健太からではなく、佐々木ゆかり主任からであったのだ。

 わたしは携帯電話を手にして玄関の方へ向かい、そしてリビングとキッチンの仕切りのドアを閉じた。
 六畳一間のワンルームのアパートはさすがに狭かった、お互いの会話が聞こえてしまうから。

「もしもし…」
『あっ、もしもし、佐々木です、今大丈夫?…』

「はい、ゆかりさんこんばんは、どうしました?」
 わたしは軽く問うた。

『あっ、いえ、あ、そのぉ、どおしてるかなぁって…』
 と、佐々木ゆかり主任はややキョドった感じで話してきたのである。

 あ、そうか…

 ついこの前、突然の彼女からのカミングアウト的な告白により、わたしは佐々木ゆかりという一人の女性である彼女と友達関係となったのである。

 だからこそのこの電話なのか…

 そして彼女は今の今まで、同性の友達と云える存在が居なかったと告白してくれての、新たなる友達関係なのだ。





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