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　54　フラれる理由…

「実は…皆、結局フラれちゃうんです…」
　僕はそう云うと、昔の彼女達を思い出し、少し遠くを見る。

　すっかり美冴さんに、僕の昂ぶった想いの機先をかわされてしまったようだ…

「フラれちゃう…」
　そして美冴さんは少し不思議そうな声でそう呟いた。

「はい…フラれちゃうんです…」
　僕は正直に言ったのだ。
　すると、美冴さんは何かを考える様な顔付きになった。

「まさか、和哉のストッキングラブの…」
　そんな事を、難しい顔で言い出してきたのだ。

「えっ、あっ、いや、違いますよ」
　だが、僕は思わず苦笑いをしながら否定する。
　
　僕のストッキングフェチの嗜好のせいだと思ったらしい…
　それはない…
　だが、ある意味、美冴さんの影響ではあった。


「なんか…実は…」
　僕はそう言いながら、美冴さんを見つめる。

　やはり、美冴さんは美しい…
　僕は心からそう想い、実感していた。
　
　しょうが無いんだ、僕はこの美しさが忘れられないでいたのだから…

「なんか…実は…
　別れた時に、三人が三人共に同じ言葉を言ってきたんです…
『和哉は、本当は、私の事なんて見てはいなかった…』…と。
　いつも私を通り越した後ろにいる誰かを見ている、みたいだなって…
　と、三人共、そう云ってきたんです」
　僕は正直に言った。

「そ、それって………」
　美冴さんは思わず絶句する。

「はい、そうなんです…
　そういう事らしいんです…」
　僕はまるで、他人事のように呟いたのだ。
　
「それって…つまり………」
　美冴さんにはその意味が通じた様であった。

　つまり僕は、いつも彼女達を通して美冴さんの影を追っていた…
　そして、その美冴さんへの憧憬の想いを彼女達に見破られ、フラれてしまっていたのだ…

「なんか、私を見ていないって…
　皆にそう云われちゃうんですよ…
　それも高校時代の彼女から、そして大学入学後にできた年上の彼女と、年下の彼女達の三人から…」
　僕は当時を想い返しながらそう云ったのである。

　美冴さんは暫く黙り込み、何かを考えている様であった。
　
　そして…
「あ…、ごめん…」
　そう謝ってきたのである。