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シャイニーストッキング

第6章 絡まるストッキング5 和哉と健太

 104 康くんの家族
 
「店長、お疲れさまです」
「あっ、和哉くん、ごめん、助かったよぉ」
 店長は出勤してきた僕の顔を見るなりそう言ってきた。

「いやぁ突然さぁ、急に一人休むって電話きたもんだから慌てちゃってさぁ、つい和哉くんに連絡しちゃったんだよ…ごめんね」
 と、店長は謝ってきたのだ。

 そうなのだ、午後5時半過ぎに僕が真実と駅前で別れ、なぜか感傷に浸りながら改札口の人々の出入りを眺めていた時に、そんな緊急な電話がファミレスの店長から掛かってきたのである。

『あっ、用事ないから大丈夫ですよ』
 そして僕はすかさずそう店長に返事をした。
 それは僕にとっては、願ったり叶ったり、の依頼であったから。
 
 どっちにしてもファミレスには顔を出そうと思っていたのだ…


「あっそうだ和哉くん、康くんが家族で食事に来てるんだわ…」
「へえ、康くん家族ですかぁ、じゃあ、顔を出してこようっと…」
 
 山田康徳…
 康くんは将来、調理師になりたいからとの希望があり、とりあえず飲食店のキッチンを経験してみたいとの事で、約一ヶ月程前からアルバイトに来ていた。
 そして康くんは高校二年生17歳であったのだ。
 それが五年前の初めてファミレスでバイトを始めた僕と重なり、僕が進んで指導係をかって出た位にかわいがっていたのである。
 僕は、そんな康くんの家族に、なんとなく興味が湧いたのだ。

 そして制服に着替え、康くん家族のいる席に向かう。
 
「あっ、和哉さんちぃーす」
 僕の姿を見て康くんは声を掛けてきた。

「ウチの母親と、ばあちゃんと、叔母さんなんすよ」
 そしてすかさず康くんは、そんな軽い感じで簡単に家族の紹介の説明をしてきたのだ。

「あっ、こちら和哉さん、ここに入ってからずーっとお世話になってるんだ」
 そして母親に僕を紹介する。

「あっ、康徳の母です、本当にいつもお世話になってるみたいでぇ…」
 と、母親は丁寧に立ち上がって深々と頭を下げながら、僕に対してそう挨拶をしてきたのだ。

「い、いや、こちらこそです…
 あ、僕は、お、奥山和哉です…」
 と、慌てて恐縮して挨拶を返し、そして何気なくその家族の座っている席を見る。

 あ、おばあちゃんか…

 うん、お姉さんか…

 違うっ…

 えっ…

「あっ…」







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