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シャイニーストッキング

第4章 絡まるストッキング3 大原本部長と佐々木ゆかり部長

 100 律子の可愛いさ

 プルル、プルル、プルル、プルル…

 おや、珍しく電話に出ないな…
 私は山崎専務と明日の記者会見の打ち合わせを終えてから、銀座のクラブ『へーラー』のホステスの松下律子と食事に行き、その合間に佐々木ゆかり部長に電話を掛けたのだが珍しく彼女は電話に出なかった。
 だいたい、いつもは4~5コールで出るのだが、どうやら着信に気付かないようである。

 ん、カラオケか…
 確か一昨夜、初めてカラオケに行ったと恥ずかしそうに、だが、楽しそうに言っていた。
 だからなんとなく今夜もカラオケにでも行って携帯電話の着信に気付かないのだろう…
 と、なぜか勝手にそう想って納得したのだ。

「あら、もうお電話終わったんですか…」
 席に戻ると一緒に食事をしている律子がそう言ってきた。

「あ、うん…」
 ふと、今夜のこれまでの流れを思い浮かべる。

 今夜は山崎専務と明日の記者会見の打ち合わせに赤坂のホテルのメンバーラウンジで待ち合わせたのだが、なんと『へーラー』のママとこの打ち合わせの後に同伴するのでこのラウンジに連れて着ていたのだ。
 そしてどうやらママが律子から、今夜私と食事の約束をしている、と、聞きつけて、このラウンジに誘ったそうなのである。
 私にはなんとなく、その裏には山崎専務とママと律子三人の包囲網的な思惑が絡んでいるような気がするのだが、敢えて詮索はしなかった。

「じゃあな大原くん、明日はよろしくな…」
「はい山崎専務、失礼します」
 山崎専務はママと、私は律子と、打ち合わせを終えてこのラウンジで別れる。

 すると、すかさず律子は私の腕に絡ませながら
「どこに連れて行ってくれるんですか…」
 と、無邪気な、美しく、そして28歳の、いや、24~5歳にしか見えない、その可愛い笑顔で甘えてきたのだ。
 私はその笑顔に年甲斐もなく、思わず、ドキンと、ときめきを覚えてしまう。

 紺色ベースの某ハイブランドのイメージの鎖のプリント柄のシルク調のノースリーブのワンピースに、薄いピンク色のショールを羽織っているその美しくもあり、可愛い姿は、どこかの良家のお嬢様にしか見えない。

 あ、実際、良家のお嬢様なんだよな…
 それがなぜ、銀座のホステスなんかしているのか…
 それが、訊きたくてもなかなか訊けない、律子七不思議の一つでもあるのだ。





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