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シャイニーストッキング

第15章 もつれるストッキング4    律子とゆかり

 173 蒼井美冴という存在感

『もしもさっきの入江くんからの電話がなかったら…
 あの後の律子はいったいどうなったのだろうか?』
 そんな想いにザワザワと心が騒めき揺らいできていた。

「いやぁ、でもぉ、あの松下秘書さんはいいオンナですねぇ…」

「あ…う、うん、そうだなぁ...」
 と、そんな私の心の騒めきの揺らぎを入江くんの言葉が遮ってくる。

 そして…
「いいなぁ…」
 と、ため息まじりに呟く。

「おや、入江くんは松下くんみたいのがタイプなのかな?」
 
「え、何を言ってるんですかぁ、世の中の男らの殆どに松下秘書を否定する輩なんていませんから…」
 そう力説してくる。

「あの艶気、あのスタイルに、あの魅惑的な脚、さっきの黒ストッキング姿も堪らなかったなぁ…」
 まるで思い返すかの様に入江くんは宙を見つめながら、堪らなそうに呟いた。

 どうやら入江くんにも、ストッキング好きなフェチ的な類いの嗜好があるようである…
 そして私もその彼の言葉に吊られ、脳裏にふて、さっきの律子の美しく魅惑的だった黒ストッキング脚の姿が浮かんできたのだ。

 あ、いや、違う…
 ふと脳裏に浮かび上がってきたのはなんと『蒼井美冴』それも先の『黒い女』といわれていた時代の彼女の姿…
 全身をいつも黒い服、黒いストッキング、黒いヒールを穿き、纏っていた、あのどことなく翳のあった、妖艶な雰囲気を醸していた彼女の姿であったのである。

 なぜか、なぜに蒼井美冴なのだろうか? 
 あ、さっき彼女も、ゆかりや越前屋朋美と共にいたからだろうか?
 あ、いや、あの対峙の時に、私の狼狽えの心情をまるで、いいや、完全に見抜き、呆れた視線を向けてきていたから…
 ううん、あれは、あの視線は、完全に私の心情の狼狽えの意味を見抜き、呆れた目といえたから。

 そして彼女、蒼井美冴もまた…
 私にとっては大切な存在感のオンナ、女の一人でもあるから。

 そう…
『佐々木ゆかり』『松下律子』『蒼井美冴』
 この三人のオンナ、女達は、今の私にとっての大切でかけがえのない存在であるのだ。

 あ、いや、私はそう心に誓ったのである、そして律子の部屋に鎮座している『ダック』という私の心を映すヌイグルミにも誓ったのだ…
 と、そんな彼女の存在感を、さっきの律子の黒ストッキングの姿からも浮かんだのである。



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