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シャイニーストッキング

第15章 もつれるストッキング4    律子とゆかり

 104 柔らかな視線

 だが…

「………でぇ、あ、そ、そのぉ、そ、そんな感じでぇ、一歩も、ニ歩もぉ、あ、三歩先まで一気に進んだ感じなんですぅ……」
 そんな越前屋さんの説明を続けている声が不意に脳裏に響き、それにより、フッと我に返る。

 そして何気なく隣の彼女を見ると、少しいつもより高揚気味な顔色になっている事に気付き、そしてその様子に弱冠の違和感を感じ…
「…あ、そう、そんな感じなんですよ、越前屋さん説明ありがとうね」
 と、無意識にそうフォローした。

「あ、はい、そ、そういう事ですぅ」
 そのわたしからのフォローを受け、珍しく少したどたどしい様相で説明の役割を終え、チラとわたしを見る。

 すると…
「あ、いや、そ、そうか、なんとなくだが分かったよ、越前屋くんありがとう…
 と、とにかくかなり一気に前進したって事なんだよな?」
 と、今度はもう一人の違和感たっぷりな彼は、ようやくわたしの顔を見ながらそう返してきた。

 わたしはそんな彼の言葉に頷き、見つめ返し…
「はい、かなりの前進です」
 と、しっかりと彼の目を見つめて答えたのである。

「うむ…そ、そうか」
 一瞬、彼の目は揺らいだのだが、直ぐに思い直したかの様にわたしを見つめ直し、頷きながらそう呟いた。

「はい、いろんな意味でね」
 そしてわたしはそんな彼なりの必死さを感じ、ワザと少し含みのある言葉を返しながら…
 今度は敢えて意識をし、柔らかめな視線で彼を見つめ返していく。

 そう、柔らかめ、柔和な目で…

 それは彼への…
『その隣の松下秘書さんとの事は、銀座のお姉さんとの遊びと同等にしか思ってないから…』
 という、わたしからの思い、想いのメッセージの意を込めた…
 柔らかめな視線。

 そして…
『いつまでもそんなビグビク、オドオドとしていないで、次の要件へと進めてください…』
 と、続けてそんな意も込めて見つめ直していく。

 そう、隣には勘の鋭い美冴さんもいるし…

 それにそんな違和感たっぷりに振る舞われていられては…
 わたしとの関係を隣の松下秘書に伝わってもしまいそうだから。

 いつもの…
 大原浩一常務らしく振る舞って…と。



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