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シャイニーストッキング

第15章 もつれるストッキング4    律子とゆかり

 68 こじつけ…

 だけど本当は、わたしひとりであの謎の存在の秘書の松下さんに対峙したくなかったから…

「でもぉ今はぁ、その資格者はノドから手が出る程欲しいですもんねぇ、きっとぉ大原常務も咄嗟にそう判断したんじゃないんですかねぇ…」
 と、とりあえず生保本社の新橋駅に到着し、三人で駅前のレストランでランチを食べながら、越前屋さんがそう云ってきた。

 敏感な美冴さんにはそんなわたしの心の微妙な揺らぎ等が伝わったみたいであるが、この越前屋さんには、いや、わたしと彼、大原常務の密かな関係を知る美冴さんだからこその理解であって、越前屋さんや他の人にはこのわたしの想い等は分かるはずもない、ううん、想像すらあり得ない…
 だから明るく、そしてあっけらかんとそう云ってきたのである。

「でも、その朝イチでの急遽というその事情は少し、ううん、わたし的にはかなり気になりますねぇ」
 と、わたしと彼の関係を熟知してるが故の美冴さんだからこそのこの言葉であろう。

「そうよね、普通に朝イチでそんな複雑な緊急事情なんて起ころう筈がないと思うし、なんか想像もつかないし…」
 そうわたしが呟く…
「うーんそうですよねぇ…
 あ、でもぉ、確かぁ、新潟支社の支社長は、前任の真中常務の子飼い的な人物の筈でしたから、そこら辺の事情が複雑に絡んでいるかもですねぇ…」
 と、まるで名探偵が推理する時の様な表情をしながら越前屋さんがそう言ってるきた。

「そこら辺の事情は全くわたしは知らないからさぁ、そういう意味でも同席してよぉく聞いてよね」
 これでわたしのその一人での対峙の不安の回避したいという理由に、無理矢理のこじつけもできたのである。

「はぁい、ちゃんとぉ、聞きますからぁ」
 本当に越前屋さんという存在は、わたしにはもう無くてはならない大きな存在感となっていた…
 あ、いや、この美冴さんもである。

「じゃぁ、まずは中島さんの処へ行きましょうか」

 そう、わたしはこれでようやく気持ちの切り替えができた…
 そしてまずは昨日に引き続きSEの中島さんによる、この画期的な『プロジェクト企画』のスタート時期を大きく左右するであろうシステムプログラムの進捗状況の確認である。

 まずはこれが、今日の優先すべき本題なのだから…


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