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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 48 伊藤敦子(14)

「そ、そろそろ寝ようかなぁ」

 わたしは自分勝手に一人で高鳴り、昂ぶり、疼かせてしまっていた自分が恥ずかしく感じてしまい…
 そう言うしかなかった。

「は、はい、そうですね、わたしも眠くなってきましたぁ」
 そして伊藤さんはそう言って…
「ふわぁぁ…」
 と、ローソファの上で全身を仰け反らし、大きく伸びをする。  

「なんかぁ、こんなにゆっくりできるのは久しぶりです」

「え?」
 突然、伊藤さんはわたしの顔を見ながら言ってきた。

「それになんかぁ、なんとなくこれからの生活がワクワクする感じがするし…」

「そ、そうなの?」

「はい、少し、あ、いや実はかなり、ワクワクしてるんです」
 その彼女の言葉は意外であった。

「え、なら、良かった…わ」

「はい…
 実はぁ、ここ何日か越前屋の家に泊まらせてもらってたんですけどぉ…」
 
 そう、伊藤さんはお盆休みに入る直前に急遽、越前屋さんの紹介でこのわたしの『新規プロジェクト』に入る事が決まったのだが…
 本当は、それまでの○△生命保険会社の極端な男尊女卑の旧態依然の社風に嫌気が指し、退職をしてご両親の住むロサンゼルスにしばらく生活しようと考え、それまつな住んでいたマンションを引き払うってしまって宿無し状態となっていたのだ。

 そしてお盆休み前とロサンゼルスから戻ってきたお盆休み後のこの数日間、越前屋さんの家に泊まっていたのだが…

「実は越前屋ファミリー全員が、あのエツのキャラそのもので…」

 伊藤さんは友達である越前屋さんを『エツ』と呼び、越前屋さんには『あっちん』か『あつ』と呼ばれていた…

「え、家族全員が…」

「はい、越前屋ファミリー全員が明るく、キャッキャッとした賑やかな性格で…」

「そ、そうなんだぁ…」

「だから、お世話になった毎日、毎晩が大歓迎の上げ膳据え膳の大宴会状態で…
 そしてやはり家族全員が酒豪で…」

「うわぁ…」

 そう、越前屋さんは自分でも酒豪だって云っていた…

「いや、ありがたいんですよ、本当に助かったし、楽しかったんですけどぉ…
 さすがに毎晩は…」

「うん、わかるわぁ」

 確かにそれは分かる…

「さすがに毎晩だと落ち着かなくてぇ…
 あ、本当に楽しかったんですけどねぇ…
 ただちょっとわたし的には…」

 

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