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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 44 伊藤敦子(10)

「さぁ、どうぞぉ、入ってぇ」

 部屋に入ると…

「うわぁ、きゃあ、ステキなお部屋…」

 初めて部屋に入った時の美冴さんもそうであった様に伊藤敦子さんも、リビング正面の窓に広がる、羽田エリアの夜景に、更にまた、感嘆の声を漏らしてきた…

「なんてステキな夜景なの」

 そしてやや絶句する…

「うん、でもさぁ、三日も住めば馴れちゃうわよ…
 それよりさあ、こっちへ」
 わたしは更に奥に案内し、彼女に当てがう部屋へ通していく。

「このお部屋を好きな様に使ってね」

「え、こんな広くて景色の良いお部屋を…」

 確かにこの部屋は10畳はあるのだが…

「うんいいのよ、ホント余って、持て余してるお部屋だから…」
 そう、このお部屋は元々夫婦の寝室として使っていたのだが…
 離婚して、一人寝になったらあまりにも広過ぎるので、わたしはリビング隣の8畳間の部屋に移り、ガランと空いてしまっていた部屋なのである。

「ほら、クローゼットも広いし…
 あ、ごめん、まだ、少し荷物残ってるんだけど、端に寄せといてね…
 明日にでめ運ぶから…」
 段ボール二つ程運び忘れていた。

「は、はい…」

「あっ、あら、大変だわ…」

 そしてわたしはこのガランとしたお部屋を見て、大切な事に気付いてしまったのである…

「ど、どうしましょう」

「えっ?」

「ベッドが、ベッドの事をすっかり忘れていたわぁ」

 そうなのである…
 本当にこのお部屋は空っぽであり、伊藤さんの寝るベッドの事をすっかりと忘れてしまっていたのだ。

「あ、はい、わたしはそんな大丈夫ですよ…
 どこでも寝れますからぁ…
 あ、そう、そうだ、今夜はそのリビングのソファで大丈夫ですから」
 と、伊藤さんはリビングのローソファを指差した。

「え、でもぉ、あれはローソファだからぁ、低いし、硬いし、寝づらいわよ」

「大丈夫ですよ、とりあえず明日ベッド買いますから、一晩くらい平気です」

「そ、そうなの?…
 ごめんなさい、すっかり忘れちゃってぇ…」

 そう、本当に、すっかり忘れてしまっていた…
 それにルームシェアの話しも昨夜の今日だったから考えも及ばなかったのだ。

「本当に大丈夫ですからぁ…
 ベッドくらいは自分で用意しますからぁ…」



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