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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 19 ロッキー…(5)

 目の前にいるこの男ロッキーは…

 見た目、約30代の遊び馴れた大人の男に見え、そして、今までわたしの廻りにいる取り巻きの男達とは全くの異質な、いや、魅力的な存在に見えてきた。

「大丈夫だよ、オレに任せなよ…
 悪い様には、いや、いい、最高に感じさせてやるよ」
 と、わたしの肩を抱き、耳元でそう囁いてくるのだが…
 それがなぜか軽い感じには聞こえなかったのだ。

「『お姫さま』の悩みを吹っ飛ばしてやるよ」

 わたしの悩み…

 それはセックスの悩み…

 セックスでイケない、絶頂感を、エクスタシーを感じた事がない…
 という悩み。

「え…」
 間抜けで、バカでら調子に乗っていた当時のわたしは、そんなロッキーの言葉、誘いにすっかり期待を膨らませてしまっていた。

 そして、ロッキーの見た目の爽やかさ、魅力的なその笑みに…
 いや、わたしのタイプでもあったのだ。

「さぁ行こうよ…『お姫さま』」
 ロッキーはそう囁き、わたしの手を引き、ディスコ『クラブCANDY』を出て、渋谷駅前でタクシーを拾う。

 本当にあの当時のわたしは、ツイていただけだったのだと思う…
 初めて会った、声を掛けられた男の誘いのままにホイホイと付いていき、事件、事故、犯罪、病気、妊娠等の被害に全く合わなかったのだから。

 今、思い返しすと、逆に怖くなる時が、いや、怖い…
 だが、こうして無事なのだから、本当にツイていたのだ。

「ホテルアイビスまで…」
 ロッキーはタクシーの運転手にそう告げる。

『ホテルアイビス』
 このホテルは六本木にあり、8割以上が外国人の利用客である…
 そしてそれはつまり、ある意味、そのホテルが軽い治外法権ともいえる存在といえた。

「『お姫さま』は噂以上にいい女だな」

「え、ウワサって?」

「いや、最近、新宿からいい女が鞍替えしてきたってさ…
 聞いたからさ…」

 ロッキーはわたしの耳元でそう囁き、そして、スッとボディコンのミニスカートから出ている脚に触れてきた…

「ん…」

 そのスムーズな手の感触に小さく震えながら…
 わたしは期待でドキドキと昂ぶりを感じてきていたのだ。

 だって、ロッキーのこの仕草、立ち居振る舞いがスムーズで…

 本当に遊び馴れている感じが伝わってきてくるから…



 

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