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シャイニーストッキング

第10章 絡まるストッキング9      美冴とゆかり

 168 カクテル言葉…

「わたしはスプリッツァーね、レモン強めで…」
 ゆかりさんはそうオーダーする。

 スプリッツアー…
 簡単にいえば白ワインをソーダで割ったカクテル。
 カクテル言葉は『真実…』

「わたしは…ブルドックを…」

 ブルドック…
 簡単にいえばソルティドッグの塩抜き。
 カクテル言葉は『守りたい…』
 
 二つのカクテル言葉を合わせると…

『この真実の愛を守りたい…』
 に、なるのだが…
 果たして、このわたし達は女同士であり、今夜は昨夜に続いて、そして昨夜の余韻を引きずっての、禁断の関係の二人といえるのだ。

 決して『真実の愛…』ではない…
 そして今は、お互いに想い人、愛しい男の存在がある。

 じゃあ、その『真実の愛』は、そのお互いの相手に対してなのか…
 それもどうであろうか。

 ふっ…

 これじゃ、さっきの不倫の映画みたいじゃないか…
 
 あ、でも、わたし達は女同士だから、果たして不倫といえるのだろうか?…

 そんな不惑な想いを逡巡していると…

「じゃ、また…乾杯…」
 そうゆかりさんが言ってきて、二人でグラスを合わせる。

「うふ、何に乾杯かしら?」

「二人の…夜に…かな……」
 そう問うと、再びゆかりさんは潤みがちな目でそう囁いてきた。

「あら…」
 そんな彼女の囁きに、ドキッとしてしまう。

 うーん、やっぱり、不倫なのかなぁ…
 と、思わず昂ぶってしまう。


 すると…

「わたし、今日の映画を観て…
 あの女優さんが美冴さんに見えちゃってぇ…
 途中から…ドキドキしてきちゃてぇ…」
 突然、そう囁いてきたのだ。

「え…、あ、あの女優さんになんて…」
 それにあんな美人じゃないし…
 慌てて否定する。

「いや、美冴さんは凄く綺麗だし、なんかぁ、あの女優さんの雰囲気といい、そしてぇ…
 あの妖艶さが…」
 と、そう囁き、濡れた目を向けてきたのだ。
 そう…
 潤んだ目から、完全に濡れた目に、瞳に、変わっていた。

 妖艶さ…
 一気にドキドキしてきてしまう。

 なんだ、なんだ…

 いつからだ?…

 わたしは、あの目が潤みがちに感じた辺りの記憶を辿っていく。

 あ…

 あれからだ…





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