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シャイニーストッキング

第10章 絡まるストッキング9      美冴とゆかり

 152 あれ以来…

 わたしは急ぎ支度を整え、化粧をし、駅へと向かう。
 
 お盆とはいえまだまだ暑い…
 瞬く間に汗が流れてきてしまう。

 だからわたしは、思い直してタクシーを拾った。

 渋谷…
 いつもの通勤時の乗り換えの途中駅なので気楽なのだが、今日はゆかりさんとの大切な『デート』なのである。

 汗を掻きたくはない…
 さっぱり、爽やかに装いたい…
 だから、タクシーで向かう事にした。

「ふうぅ」
 タクシーにして正解だわ…
 エアコンの冷気が心地よい。


 映画かぁ…
 映画なんていつ以来だろうか?…
 後部シートに座りながらそう考える。

 あ…
 少しだけドキリとした。

 そうだわ、映画は、あれ以来…

 和哉との最後の日の…
 和哉から消える前に観た…

 それ以来だ。

 そう、あの映画…
『氷の微…』だ…

 でもその日は、突然、元旦那と義母に離婚を云い渡され、あまりのショックにその映画の内容は全く覚えてはいない…

 あれ以来だから、五年振りだわ…

 でも今は、和哉の優しさと新たに愛されたゆうじという存在のお陰で、もうあの離婚については…
 心は、騒つかない。

 そういったケジメの意味でも映画鑑賞は、いい切り替えかもね…
 そうわたしは思った。

 だが、しかし…

 本当は、今の想いは…

 ゆかりさんと一緒ならば…
 何でもよいのである。

 例え、映画だろうが…

 ショッピングだろうが…

 遊園地や水族館、テーマパーク等の類いだろうが…

 食事やお茶だろうが…
 
 一緒ならば何でもよいのだ。


 ワクワク感の昂ぶりが増すばかりである…

 早く…

 早く、ゆかりさんに逢いたい…

 ゆかりさんの笑顔を見たい…

 匂いを感じたい…

 触れたい…

 声が聞きたい…


 ゆかりさんはどんなファッションで来るのだろうか?…

 どんな雰囲気で来るのだろうか?…

 わたしのこの服の雰囲気と合うかしら…
 ワクワク感が止まらない。


 やっぱり…

 デートだ…

 デートの昂ぶりだわ…

 そして間もなくタクシーは渋谷の道玄坂の手前に差し掛かる。

 時刻は午後2時半…

 約束は午後3時であるが…
 何となく、ゆかりさんはもう到着している様な気がしていた。






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