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シャイニーストッキング

第10章 絡まるストッキング9      美冴とゆかり

 19 空っぽの冷蔵庫…

 そして本当に新品同様にピカピカで綺麗なのだ…

 だからわたしは、ゆかりさんのこのキッチンへの愛着と、こだわり感も余計に感じられ、更に感銘、感動して興奮してしまっていた。
  

「でも慰謝料代わりに貰ったマンションだし…
 一人じゃ広過ぎてさぁ…」
 するとゆかりさんはそんな事をボソッと呟いてきたのである。

「そうですよねぇ、さすがに一人じゃ広いですよねぇ」

「そうなのよ、3LDKあるから…」
 更にそう呟いてきた。

 確かにそうかも、一人住まいには広過ぎるかも…
 と、わたしもそう思う。

「じゃあ、わたし、一緒に住んじゃおっかなぁ」
 だから、つい軽く、わたしはそう言ったのである。

 だが、半分は、本当にここに住みたいと、内心、咄嗟に思ったのだ。

 だって、このキッチンにしろ…

 この立地にしろ…

 そしてこの窓の外の羽田のベイエリアを一望できる高層階…

 正に、夢の、憧れのマンションであるから…

 そして、それに…

 本当に、このゆかりさんと一緒に住めたならば楽しいかも…
 と、内心、そう思ったのである。

「えっ…」
 でもゆかりさんは、そんなわたしの軽い冗談気味に返したその言葉に、意外な反応をしてきたのだ。

 わたしはそんなゆかりさんの反応に、内心ドキッとしてしまった…

「よいしょ、あ、コレ冷蔵庫に仕舞いますね…
 全部仕舞えるかなぁ?」
 そこでわたしは、内心の動揺を悟られまいと、話題を変える意味でそう言った。

 なぜならば、一緒に住むのは…
 あまりにもリアリティに、現実性に、欠けるから。

 だから、そんなゆかりさんの反応に少し違和感を感じたのだが、反面、そんな彼女の反応が好意的にも感じられて嬉しくもあった…

 そしてわたしはその話題を変える為にも、そう言いながらクーラーボックスを開け、冷蔵庫のドアを開けた。

「あ、あら?」
 
 するとわたしは…

 えっ…
 
 冷蔵庫を開けて驚いてしまった…

 
「あら、中が…」

 そうなのだ…
 冷蔵庫の中が、ほぼ空っぽなのだ。

 こ、これは…

 これって…


 その冷蔵庫の中には、缶ビールが数本…
 赤、白のワインが2本程…
 そしてマヨネーズやソース、醤油等の調味料、あとチーズが少しだけ…
 その位しか入っていない。





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