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シャイニーストッキング

第3章 絡まるストッキング2 美冴

 15 甘さ

 シャワーを浴びている間にそっと帰ってくれ…
 という彼女なりのアピールなのであろう。

 本来ならばこの前の逢瀬の時のようにシャワールームに乱入し、再び美冴を抱くという選択肢もあったのだが、その行為は今夜に限りなぜか彼女を追い込んでしまうように感じてしまい断念をしたのだ。

 いい関係を続ける為にも、今夜はもう退散する事が正解なんだ…
 そうはわかっているのだが、なぜか今夜は後ろ姿を引かれる思いがしているのである。

 この僅かながらの嫉妬のせいなのか…
 私が武石健太に嫉妬心を持ったというのであろか。
 確かに一瞬、美冴を取られたくはない、と思ったのである。
 あの着信の時に複雑なザワザワが湧いたのだ。

 ダメじゃん、やはり全然尖れてなんかいない、全然ワイルドなんかになれていないじゃないか…
 
 こんな自分の甘さに自己嫌悪さえ感じてしまうのである。
 私はそう想いながらも、美冴がシャワーを浴びている間に部屋を出てホテルを後にしたのだ。

 外は深夜零時になろうという時間にも関わらず、まだまだ蒸し暑かった。
 だから一瞬悩んだのだが、やはり歩いて帰る事にした。
 このホテルからは自宅マンションまで徒歩で約10分の距離なのである。

 最近、運動不足だし
 それに帰宅したらシャワーを浴びるのだ、汗をかいてもかまわない、だからたまには歩いて帰ろう…
 そう思い歩く事にした。 

 そして携帯電話を取り出し、ゆかりに電話しようと思ったのだが、止める。

 だいたいが今夜は山崎専務に呼ばれた事になっているのだから、尖るのだ、尖っていたならばこっちからは電話などしないのだ…

 それにどうせまた明日になれば、コールセンター部で会えるのだから。
 ヘタに電話して勘ぐられたくはなかったのである。

 とにかくゆかりは異常に勘が鋭いのだ…
 ヘタな受け答えでもして墓穴を掘りたくはないのだ。

 それに今夜は若いメンバーで、二次会的にカラオケに行ったのだから、楽しんでくればよい…
 そこはオジさんの出る幕ではないのだ。

 そして武石健太か…
 本当に一瞬だけ嫉妬心を意識した。

 確かに美冴を取られたくはない、という心理が少しあった…
 そんな嫉妬心に少し戸惑っていたのである。

 そしてその嫉妬心は彼の若さに対しての嫉妬心でもあるのだ…







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