テキストサイズ

シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 167 キラキラして柔らかく…

「あ、もちろん、佐々木部長にもぉ、みんなぁ、憧れてますよぉ…
 その若さで部長昇進の、更に
『新プロジェクト』のリーダーなんてぇ…凄いってぇ」

「そ、そんな…」

 その彼女の取って付けた様なお世辞が、逆に恥ずかしい…

「あ、すいません、こんな気楽に話し掛けてしまってぇ…
 だけどぉ、佐々木部長も変わりましたよねぇ」

「え、変わった?」

「あ、はい…
 以前はなんかぁ、こんな感じに話し掛けられないっていうかぁ、近寄り難いっていうかぁ…
 あっ…」
 彼女はつい、口が滑った慌てた顔をしてくる。

「あ、うん、『鉄の女』でしょう…
 そう言われてたのわたしは知っていたわよ……」
 だから、そう笑って言ってあげたのだ。
 
「あ、は、はい…」
 彼女は救われたぁ…って顔をしてきた。

「佐々木部長、彼氏でも出来たんですかぁ?」
 するとそう訊いてくる。

「えっ…」

「だってぇ最近の佐々木部長はキラキラして、柔らかくなった感じがするからぁ…」

 あ、また、そう言われた…

「ううん、彼氏いないわよぉ…」

 やはり、皆、そう感じるのかぁ…
 だが、面倒だから彼氏は居ない事にしている。

「勿体ないですねぇ、こんなに魅力的なのにぃ…」
 そう彼女は言ってきたのだが軽く流し、そしてその後も少しだけ話して先にトイレを出た。

 やはり、わたしは丸くなったのだ…

 彼のおかげかなぁ、いや、彼に愛されているという事なのかなぁ…

 だが、とにかく、彼女との雑談のおかげで気分転換が出来たのである。

 よし、仕事をするか…

 そう、この当番出勤は余程のトラブルでもない限りは暇なのである…
 だからわたしは今日のやる事を、課題を、用意していたのであった。

 新プロジェクトである『新規事業計画』の連休明けからの予定…

 杉山くんと詰めている『新規事業案件』の再確認…

 新採用の『伊藤敦子』さんのポジション…
 等々、やる事は山積みであった。

 そしてこれ等に集中する事により、昨夜から戸惑い、困惑している、不惑な想いも忘れられるんじゃないのか…
 そうも思っていたのだが、さっきのトイレで、思いも寄らず美冴さんの話題が出てしまい、そうは簡単には忘れられそうにはなかった。

 だが、まずは仕事をするしかないのだ…






ストーリーメニュー

TOPTOPへ