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ほしとたいようの診察室

第8章 入院生活は続く





「白衣、汚してしまって、ごめんなさい。……汚れ、落ちましたか? わたし……わたし、陽太先生にあんな自分を見られたことが、恥ずかしくて、悔しくて仕方なかったんです」




素直な言葉がこぼれ落ちて、同時に涙が溜まっていく。見られまいと俯くと、白いシーツの上にいくつもの水玉模様ができた。



「大丈夫だよ、気にしてくれてたんだね」



そっと、陽太先生がわたしの背中をさすってくれる。手のひらが、温かい。
凍りついた心、そのわだかまりを全て解くかのようなあたたかさだった。




「……それだけなんです。それだけ、どうしても伝えたくて。……明日から、薬増えるから、そしたら……また、陽太先生に、吐いてるところ見られたら、わたし……」



そこまで言うと、もう言葉が出なくなってしまった。魔法が解けたように、口にしていた言葉が喉元で滞る。
胸が詰まるように苦しくて……。


震える。


言葉の代わりに、涙がとめどなく溢れて、とまることがなかった。
何が悲しくて、何がつらくて、泣いているんだろう。そんなことを冷静に考える自分がいて、その答えを見つけ出す。




……強さを増していく治療が、怖いのだ。



複雑に入り乱れる感情と思考。その全てを受け止めるように、陽太先生は声をかけてくれた。




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