ほしとたいようの診察室
第8章 入院生活は続く
しかし不思議と、陽太先生が来ると病室が明るくなるような気がした。病室内にやわらかい風が吹くように、重くなりそうな空気を追い出していく。
「のんちゃん、遅くなってごめんね。ここ、座っていいかな?」
言いながら、ベッドサイドに置いていた椅子を陽太先生が指さす。
わたしは、頷きながら、
「忙しいのに……こちらこそ、ごめんなさい」
と、目を見ずに謝った。
見ない、というより、見ることができなかったのだ。
「ううん。大丈夫」
陽太先生に、酷いことをいっぱいしてしまったのに、陽太先生は変わらず笑顔のままだった。
それに、心が痛んだ。
「久しぶりだね」
本当に久しぶりだったように、陽太先生は言う。5日ぶりが久しぶりかわからないけれど、頷く。
きっと陽太先生の中では、もっと時間の流れが急なんだと思った。
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