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ほしとたいようの診察室

第7章 回想、主治医の苦悩

……



そんなある日の夜。


その日は宿直だった。


夜中、静まった小児科病棟を歩いていると、子どもの陰が廊下に見えた。




……のんちゃんの病室の方向である。





「あれ? だれー? 眠れない?」


立ち尽くしている陰に声をかけてみると、


「……よーたせんせー……グスン」


と、すでに涙交じりののんちゃんの声が聞こえた。


「どうしたの、こんな時間に」




駆け寄ると、めそめそと泣いている。
足元を見ると、ズボンから下がすっかり濡れて、水たまりができていた。


「あれ、おしっこ出ちゃった?」


「おといれ……いきたかったのに……」


言いながら、大粒の涙をぽろぽろと溢していた。


「そっかそっか、泣かなくていいよ。誰でもあることだからね」




どうやら、トイレに行く途中に、間に合わなくてお漏らししてしまったらしい。



「とりあえず、トイレ行こうか」



そのままのんちゃんの両脇に手を入れて、ひょいっと持ち上げると、幼児用トイレに急ぐ。





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