テキストサイズ

ほしとたいようの診察室

第7章 回想、主治医の苦悩




「おはなさいてる!!!」



そんな俺の気持ちとは裏腹に、のんちゃんが咲いている花に近寄る。

繋いでいる手を引っ張られるようにしてついていくと、木陰にシロツメクサがまだ咲いていた。



駆け寄ってしゃがみ込むのんちゃん。


少しだけ手を離して、その場に一緒にしゃがんむと、ひとつ、花を摘む。




「花冠でもつくる?」




のんちゃんは、不思議そうに首を傾げた。
初めて聞いた言葉らしい。


「はなかんむる?」


「花冠。お花でかわいい輪っかを作って、頭にのせるんだよ。お姫様みたいにね」



そう言いながら、すでに手を動かしていたのは子どもの頃の癖だった。妹によくせがまれて作ったことを、手が覚えている。

お姫様、と聞いた瞬間から、のんちゃんの目が大きく輝きだす。




「おひめさま!! のんちゃん、おひめさまになりたい!!」




のんちゃんは、俺の手元を興味津々で覗き込む。
すると、見よう見まねでのんちゃんもお花を摘んで何かを作り始めた。



蝉の声も遠くなるくらいに集中して、黙々と、静かにその場にふたりでしゃがみ込んだ。






ほどなく、


「「でーきた!」」


気づけば、お互いが声を上げていた。






ストーリーメニュー

TOPTOPへ