テキストサイズ

ほしとたいようの診察室

第7章 回想、主治医の苦悩




……3月末から入院しているのんちゃんは、1ヶ月近く、家に帰っていない。
外に出せるような状態ではなかったからだ。
ひどい喘息で発熱している今は、到底、叶えられる願いではない。





しかし……




主治医としては、のんちゃんの願いを叶えてあげたかった。

もう少し良くなったら。

一時帰宅は無理でも……病院の中庭を散歩させるくらいなら、できるかもしれない。




「のんちゃんが毎日頑張って、お薬飲んだりもしもししたり、ちっくんできたりしたら……陽太先生が連れて行ってあげる」




「……うん」





熱で潤んだ瞳は、眠たげに閉じていく。


「今日は寝ようね」


とんとん、とリズムを一定に体を揺らす。


「うん……だっこしてて」


「いいよ、今日だけ特別だからね」







まだ苦しそうな息を少しだけ残しながら、のんちゃんは俺の腕の中で、すーすーと寝息を立てた。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ