
ほしとたいようの診察室
第6章 回想、はじめまして
「叶恵さん……と、実習生の」
俺が声をかけると、彼はハキハキと名前を言った。
「あ、こ、湖出蒼音です! 」
「ごめん、よろしく。なんでもいいから抑えてて」
「了解です」
「わ、わかりました」
「ちっくんしない! いや、やだーーーー!!」
採血も点滴の刺し直しも一苦労。
抑える係はだいたい2人くらいいないと無理だった。
「ゆうせんせ、きぃーらーいいーーー!!」
「はいはい、嫌いで結構。消毒するぞ」
2人に固定された腕はびくともしない。
抑えててアザにならないうちに、とバットの中の注射器とスピッツを確認する。
「ちっくんやめてーーーーー!! もうきらいっていわないからー!!!」
のんちゃんの懇願を聞き流し、細い血管に目を凝らす。
「叶恵さん、どっちの腕が良さそうだ?」
「うーん、左ですかね」
