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ほしとたいようの診察室

第6章 回想、はじめまして



「そっか。じゃあ、優先生は、のんちゃんがプリンを食べられるように、体を治す仕事をしてるんだ」


「おいしゃしゃん?」


「そう。かしこいな。優先生はお医者さんだ。痛いことするかもしれないけど、全部、のんちゃんが元気にお家に帰るためにやってる。わかってくれるか?」



のんちゃんが小さく頷いたのを確認して、立ち上がった。

きっと、ずっといたら緊張して眠れないだろうから。



「ん。じゃあ、また明日。」

そう思っていたが……





「ゆうしぇんせ、いかないで」




心細そうな声がして、白衣の裾をぎゅっと引っ張られる。意外と強い力だった。


「じゃあ、もう少しここにいる」


椅子に腰掛け直すと、のんちゃんは安心したように手を離して、

「いたいのなし?」

確認してくる。



ゆっくりと首を横に振って、笑う。

「今日はもうしない。のんちゃんがゆっくり寝られるように、冷たい枕の見張りをしてる。寝られるか?」

俺が両手でメガネのマークを作ると、のんちゃんはくすっと笑った。
くりっとした二重の目が、ハの字にたれる。


「うん」



……初めての笑顔だった。



高熱で苦しそうだったが、幾分安心した表情だった。





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