
副業は魔法少女ッ!
第3章 ガラスの靴の正体は
「どういうことですか。友達や恋人の……ご親戚の法事に?」
「あ、それが、本人の……ご不幸で……」
「お亡くなりになったということですか」
「佐伯くんには、黙っておいて。彼もナーバスになっている時期だと思うから」
ゆづるの妹は言うまでもなく、ルシナメローゼにいる従業員の友人や恋人なら、天寿の半分にも至っていない年端のはずだ。それが病に冒されたり事故にあったり、こうも揃って生命をおびやかされることがあるのだろうか。ただし、ゆいかは当事者だった。
「佐伯くんの妹さんが助かるか、なつるさんに先読みすることは出来ますか」
「なずなちゃんは、心配しないの。私の出る幕じゃないわ」
刹那、なつるの顔色が変わった。それをゆいかは見逃さなかった。だが傍らで、椿紗が深く頷いていた。それから彼女が戸棚から菓子箱を出してきて、お茶にしようと言い出した。
椿紗が話題を変えたがったのは、なつるを守るためだろう。ゆいかとて予知能力などを持てば、不用意に使いたくはない。相手の死相まで見えてしまえば、ゆいかのように救われる人間も増やせる以上に、避け難い不幸をいくつも見過ごすことになるはずだ。
