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副業は魔法少女ッ!

第8章 正義の味方のいないご時世


 きっと今日が限界だった。

 プロポーズの指輪を見せられた時、彼女も何か察したのだと直感した。受け取れなかった。形見を両親に言付けながらも、彼女にはいつか自分を諦めて、新しい愛に出逢って欲しかったから。そこまで伝えなかったのは、今はまだ、彼女の想いがゆいかに向いていたからだ。切実な愛を注いでくれる彼女に、さも簡単に、次の愛を見つけてくれとは言い放てない。


 もうそんな必要も、なくなった。


「じゃあ、八神くんの家族の時も……。力の差が歴然としていたのに、何かの拍子であっさり封じた……」


 事実が払拭される魔法。

 彼女に残っていた魔力は、ゆいかの病気をなかったことに処理したのだ。


「夢みたい……ゆいか、愛してる……もう置いていかないで……」


 綺麗な声が、震えている。彼女の腕も、高揚に打ち震えているのが分かる。


 ゆいかとて同じだ。やはり女神だったではないか。


「有り難う、明珠。こんなにスッキリしてるの、久し振り。いっぱい埋め合わせして、楽しいこと一緒にしようね。ちゃんと仕事復帰する。明珠を幸せに出来るパートナーになる。こんな奇跡をもらった分、最高に幸せになる……!」


 来世はいらない。正しさも。そう思えるほど、今を愛せる自分でいたい。


 群青色に飲まれていく茜色に注がれて、ゆいかは明珠に腕を回した。

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