
副業は魔法少女ッ!
第1章 アルバイトで魔法少女になれるご時世
一色明珠が総裁するビューティーサロンの運営会社にゆいかが社員として迎えられたのは、昨年の春だ。
四年前、僅か二十代後半で会社を一つ立ち上げた明珠は、美しさにおいても定評がある。
社長業の激務を感じさせない絹の肌に、鍛えた筋肉を造形的に浮かせた体躯、人間の目や鼻に黄金比があるとすれば彼女にこそ当て嵌まるだろう顔立ちは、さしずめ生きた芸術品だ。そのくせ話すと親しみやすい。
明珠の会社は順調に店舗を増やしていたが、社員達には定時上がりが保証されて、互いのノルマを監視し合う習慣もない。不要なストレスとは無縁の社内は良からぬ人間関係の噂もなく、ゆいかの配属先の女達も、サークル仲間のように仲が良かった。
──葉桐さんは、美人の無駄遣いだよ。何で美容学校出なかったの。現場行ったら、確実に人気スタッフになれるのに。
──いっそゆいちゃんを今度のイメージキャラクターに使わせて欲しい。趣味でいいから、今度、撮影付き合ってくれない?
輪の出来上がった女のグループに入った新参者は、浮くか爪弾きの標的になる。多少は身構えていたゆいかも、入社して一週間経つ頃には拍子抜けしていたものだ。
