
刑事とJK
第47章 謎のおじさん
『何じゃれあってんの?
斉藤とおじさん、仲いいね』
ゆうひは手を拭きながらこっちへ戻ってきた
「仲良くねぇ
ってか、なりたくもねぇ」
「酷いなあ斉藤君」
岩崎は苦笑した
「……」
斉藤は立ち上がって、プラスチック製の長い物差しを取り出した
『?』
「オッサン、ちょっと立ってくれねぇか?」
「ええ~、別にいいけど、何で?」
岩崎も立ち上がった
『…何するの?』
ゆうひは不思議そうな顔をした
「オッサンはここから一歩も動くなよ?」
「何か怖いね」
斉藤は腕を伸ばして物差しを岩崎に向けた
物差しの先は、ちょうど岩崎に当たらないくらいの位置だ
斉藤は物差しを振り上げて、そのまま岩崎に向かって振り下ろした
『斉藤!!!』
物差しはヒュンッと風をきったが、岩崎には当たらなかった
『…あ…』
「スゲーな、ほんとに動かなかったんだな」
斉藤は物差しを手にポンポンと置いた
「斉藤君が動くなって言ったんだろ?」
「物差しとオッサンとの間隔は1cmもないくらいだった。
普通の人間なら、たとえ動かなかったとしても、反射的に目ぇくらいは瞑るだろ」
「……」
「オッサンは瞬きすらしなかったな
物差しが当たらねぇって確信してたんだろ?
角度と距離とを一瞬で計算してよ」
「そんなこと、出来るわけがないじゃあないかっ
むりむり」
岩崎は笑ったが、斉藤はこれを冗談ですますつもりはない
「実際、あんた今やっただろ?染谷教授」
『え…染谷?』
「……斉藤君って、意地悪なんだね」
岩崎はゆっくりと椅子に腰掛けた
