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この夏、君に溺れた

第6章 夢の終わり

どうしてそんな事聞くの?

「元々、そう言う約束だったし。」

「そうだよな。」

しばらく先生は、私の側にいたけれど、私がそれ以上何も言わないのを見て、急に立ち上がった。

「荷物はあらかじめ、全部詰めとけよ。」

「……うん。」


引き留めてくれないんだ。

それが、ちょっと寂しかった。

「俺さ。最後まで推敲粘るから、もしかしたら送っていけないかもしれない。」

「ううん。気にしないで。」


言った途端、悲しさが込み上げてきた。

「私の事気にして、コンテストに間に合わなかったら嫌だし。それに駅まですぐだし。」


ダメだ。

涙が出る。


「そっか。」

先生のいるリビングから、パラッと原稿を捲る音がした。

「なあ、芽依。」

「はい?」

しばらくの沈黙の後、重苦しい口調で、先生が聞いてきた。


「俺と一緒にいて、楽しかったか?」

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