テキストサイズ

え、ちょっと待って、なんで私が勇者なの!?

第7章 ガシ国

朝、少し冷たい空気が流れ、川の水面からはうっすらと霧のようなものが発生している。

光邦は体を這う虫や、獣の鳴き声で、熟睡は出来なかった。

一晩で憔悴しきった光邦に、オイドが説明をする。

「よいか、口にこの筒を加えながら、両手両足でしっかりと袋を抱えるんだ。荷物は紐でしっかりと縛り、流されないように固定しろ」

「中に水が入ったらどうすんのよ。化粧道具台無しよ」

「ならば袋をもう一枚やる。その中に入れて口をしっかりとくくり、水が入らないようにしておけ」

「私はなにを聞かされてるの? はじめから転覆した状態でプカプカしながら、流れに身をまかすって、それ、船じゃないわよね」

オイドは驚いた表情で、光邦を見る。

「なにをいう、船とはそういうものだ。ただ、沈まないようにすればいいのだよ」

考えてみれば、ターキーもトリセンナシも船を使うような場所はなさそうな国だった。

もちろん、豪華客船による優雅なクルーズなんてものはないだろう。

「当たり前のことが幸せだったんだなぁ~って、改めて思うわ」

オイドは水面を眺め、川の流れの強さを分析。

「出発するなら今だな。水の温度に体を慣らさないといけないし、この流れなら今のところ危険はない。だから、早くそこの副大臣さんを起こしてくれ」

「まだ寝てんのかい」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ