
仔犬のすてっぷ
第2章 出会い
つー…っ
彼の鼻の下から、赤い筋がひとつ垂れた。
「え゛?は、はなぢ……?」
彼は素早く鼻の下を押さえ、僕はキッチンの脇にあるボックスからティッシュを引き出し素早く手渡した。
「あのねえぇっ!こんなの見てコーフンするか?ふつー?! オトコの体だろ?!」
鼻血が垂れないよう、片方の穴にティッシュを詰め込んだ彼か、ずいっ!と近づいて
バシンッ!!
片手を壁に付き、一気に距離を詰めた。
彼の吐く生温かい息が、顔に吹きかかる距離だ。
(こ、コレが世の中の女の子が憧れる壁ドンってやつですかぁ〜?)
うわー!ちかい、近い、近すぎるっ!
ちかすぎ・・・
「……ぷっ!」
こんなイケメンなのに、鼻にティッシュ…
しかも、ちょっとその紙が赤くなっている
ところまで見えちゃったら・・・。
悪いとは思いつつも、思わず吹き出してしまった。
「……おい。随分と余裕じゃねぇか。解ってんのか?」
だ、駄目だ……笑いのツボに入っちゃって、抜け出せ無い!
「だ、だ、だって…あは、あはははっ」
「もう一回、ヤられたいのか?」
「も、もういっ……ははははは、もういっかいだっ…はぁあはは、く、くるし……」
お腹を押さえながら、辛うじてキッチンの隅っこに置いてあった手鏡を手に取ると、
【見てみなよ】
と、彼に向ける。
「あ?何を………げっ?!」
彼もその事態にようやく気が付き、鼻からティッシュを抜き取る。
しかし、まだ止血出来ていなかった彼の鼻からは、再び血が垂れ出して……。
「ほらほら。早く栓をしなきゃ……あああ、くるしかったあ〜…」
