
仔犬のすてっぷ
第29章 反撃、そして・・・
「……そこにあなた達二人の〈愛の力〉が加わった事で、 “奇跡” を引き起こした。
さっきのトーマスを倒した一撃は、示し合わせないと難しい連携だけど…そこにいたるまでに、実はいくつものミラクルを起こしているのは、分かる?」
「……僕が解るのは、蒼空の動きに変化があった事……それから、意識の同調……」
「・・・悪い。俺頭悪いから簡単にまとめてくんない?長くて沢山話されるのは、仕事でお客さんの話し相手している時だけにしたいし」
蒼空が頭をガシガシ掻きながら相田さんの横に立った。
3人の女性にタコ殴りにされた分のダメージはとりあえず抜けたらしい(苦笑)
「・・・はいはい。そうね。
じゃあ、順番に、簡単に説明するわ」
“仕方無いわねぇ” と、肩をすくめた彼女は小さく溜め息をついてから改めて話し始めた。
「…まず、1つ目。
貴方達…パンドラハウスのメンバーは、調査した結果、半数が〈LOVTIT…能力者〉の可能性があります。
それは歩美オーナー……彼女が手を差し伸べた条件に一致するわ。
孤児や片親で幼少期を過した子。
イジメなどの迫害を受けた経験者、
自殺未遂者や貧困で若くしての苦労人……
ラビットの能力が発現する第一の条件はなんらかの愛情の欠如。
〈愛に飢えている〉事が第一条件なのよ」
……僕は子供の頃、確かに迫害を受けていた。
ソレがそんなものにつながってくるのか……?
「2つ目。
その〈愛の渇望〉を満たす存在が近くにある事。
パンドラハウスの例で言えば、歩美オーナーの存在がそれに当たるわね。
誰かが自分を必要とし、期待してくれている事が実感出来ると、期待に答える為に必要以上に頑張ったりするでしょ?」
………そこは……僕の場合は森川店長がそこに当たるの……かな?
あまり期待には添えていない気はするけど(汗)
「3つ目。
想像力、感受性の強さ、発想の豊かさ……妄想も含めて、頭の中でそれを願う想いが強くイメージ出来る事。
迷いの無い強い願望がトリガーになって、力が具現化するケースが多いわね。
蒼空君の例で言えば、〈もっと速く動きたい〉〈もっと重い打撃を打ちたい〉〈絶対に負けられない〉って思って戦ったでしょ?」
「・・・あ、ああ。確かにそれしか頭に無かったかもしれないな……」
……蒼空は納得したようだ。
