
仔犬のすてっぷ
第29章 反撃、そして・・・
「…あれ?じゃあ、幸お姉ちゃんや夏美お姉ちゃんより・・・」
そこまで口に出した僕は、3つの重たい視線を感じ、ピタリと話すのを止めた。
……もしかして、女性のアンダーサーティには年齢ワードはNGなの…かな?(苦笑)
…しかし、そこら辺の空気を読みそこなった哀れな子羊(…の皮を被った自称オオカミ君)は、あろう事か台詞の続きをうっかり(?)つないでしまった。
「……どした?優希。
二人はそのオバサンより歳う・・・」
どかばきげしぐしゃあぁっ!!!
「げはあ…げはぁ……はぁ…はぁ…あ…ぁ…ぁ………」
まるで格ゲーの超必殺ラッシュのような鉄拳制裁(タコ殴り)を3人からまとめて受けた蒼空は、体中から白い煙を上げながら、エコーのかかった悲鳴を上げてゆっくり地面に倒れ込む。
………KOっ☆
「………こりゃあコンティニューは無理そうだナ・・・」
トーマスが彼の眼の前に転がる白い消し炭に手を合わせ、合掌する。
「何の話をしていたんだっけ……」
「……………。」
「そうそう。で、ね?優希君」
夏美お姉ちゃんの耳打ちで、話そうとしていたオバサ……もとい相田さんは、僕の手をフワリと優しく握った。
……途端にゾクゾクっと身体が栗毛立つ。
「……まだ神経系のお薬の効果は切れてないのね……今さっきまで貴方は不思議な感覚を経験したはずなんだけど……ひとつはその薬の所為って訳でね。
神経が研ぎ澄まされた感覚・・・相手がどんな行動を取ろうとするかが判りやすくなっていたんじやないかしら?」
・・・そう言えば確かに……
トーマスの一挙一動が、スローモーションに見えていた。
心当たりのあった僕はその問いかけに頷いて答える。
「ソレが貴方の元々持っている能力よ。小さな頃から相手の考える事や感じてる事を解っちゃう……そんな時があったでしょ?」
・・・あまり覚えていないけど……
明美さんは、僕のその能力に惹かれて……今回の騒ぎを引き起こした訳だよね……。
さっき彼女はそう主張していたし。
「……子供の頃の事はよくは覚えてなくて・・・ただ、小さな頃から “勘のいい子” だとは言われてました」
