
仔犬のすてっぷ
第29章 反撃、そして・・・
トーマスの着地点…そこへ深く、深く踏み込んで、彼の体が来るその一点目掛け、身体を捻り左肩を跳ね上げ…るッ!!
ーー ズ…バァンッ!!
「なっ?!何ぃおぅお?!」
バックステップで完全に両足が浮いた瞬間のところを背後から、僕の、全体重が乗った鉄山靠をモロに受けたトーマスの身体は、弾かれたピンポン玉のように軽く高く跳ね上がる。
彼にとって予想外の攻撃に、さしもの彼も声を裏返して驚くしかない。
バランスを崩しガードも出来ない状況のまま、トーマスが飛んで行く先には、僕が頭に描いた場所で身体を一度回転させながら、体重と遠心力をミックスさせた最後の一撃を放つ準備を終えた蒼空が待っている。
「……これでッ!」
捻った身体の影から蒼空の長い脚が、見えないほどのスピードでトーマスに向かって放たれる。
ーー ズ…ドカッ!!
蒼空の右の……変則踵落としが、トーマスの顔面にクリーンヒットした。
「・・・アンタのアドバイス通り、威力が分散されない究極の一撃だ。効くだろ?」
どしゃあっ……
決まった!
トーマスは、頭から仰向けで倒れ込んだ。
僕達の、勝ちだ!
「やっ…やったああ!蒼空ぁ!」
蹴り終わりで呼吸を整えていた彼に、僕はひしっ!と飛びついて喜びの声を上げた。
僕の思い描いた通りに…言葉無しで意思疎通して二人で戦い、強敵に打ち勝った。
これは、蒼空が…パートナーが彼だから出来た事だと思う。
「へ…へへっ☆なんか…出来すぎだな……ってててててっ!
あいちち……そんなにくっついたら、立ってらんないだろぉ?」
僕に抱きつかれ、バランスを崩した蒼空はべたん!と尻もちをついて…僕と一緒に倒れ込む。
「君ってやつは…今のはカッコよかったよっ♪」
「いやあ…ありゃあ、優希のおかげだ。俺だけだったらコイツには勝てなか・・・」
「ぅおあ〜…いちちいぃ〜…今のは効いた〜!」
顔面を押さえながら、トーマスがむくっ!と起き上がる。
「うぉわあひょわあ?!」
完全にKOしたと思い込んでいた僕らは、お互いにひしっ!と抱きついたまま飛び上がって驚きの声を上げた。
