
仔犬のすてっぷ
第29章 反撃、そして・・・
「・・・あ、ああ!行く…か!」
夢とかでは無く、アレは現実だった。
……と思えるには蒼空の反応が薄い。
やはりアレは僕の、現実逃避から来た幻想だったのか……?
…そう思った時だった。
「お前の記憶に、俺のカッコ良い姿を刻んでおかねえと、また恥ずかしい姿を見せられちまうからなあっ!」
あの体験をしたからこそ、出てきたセリフ……
間違い無い。
………よかった!
アレは、幻なんかじゃ無かった!!
「イテェ…んだよッ!
…テメェ………その手をっ……」
掴まれていて痛いはずの右足を軸にして、蒼空が左脚を前へ振り上げる。
逆さまになっている為カンタンに脚は前へ動くが、その分掴まれている足首には相当の負担がかかり、痛みは激しいハズなのに……
「離し、やがれええぇっ!!」
踵を、その掴んでいる手目掛けて振り抜く。
鍛えた腹筋や背筋が無ければ無理な芸当を蒼空はあっさりやってのけた。
ーー ガシッ!
「ッッ…!」
踵落としがトーマスの左手を打ち抜いた。
たまらず両手の力が抜けてしまったトーマスが、手を離して僕らを開放する。
地面に着地した蒼空と落ちて尻もちをついた僕は、素早く彼を挟み撃ちにする形をとる。
………ここからが、勝負だ!
僕は、腰のバスタオルに手を掛けて、鋭い眼光で僕を睨むトーマスの目をしっかり見つめる。
正直言えば、まだ怖い。
現に殺気は先程からと変わらず放たれていて、気を抜いたら漏らしちゃいそうだ……。
でも、コレからやろうとしている事を考えたら……恥ずかしさ的には変わらないんだ。
(ううっ……これでもし、動揺してくれなかったら・・・いや、大丈夫!第一迷ってる時間は、無い!)
「・・・さっきからアンタは、僕をずっと嬢ちゃん嬢ちゃん言ってるけどさ…そんっなに僕の事が気になるんなら・・・」
僕はバスタオルを握る手にぐっ!と力を込めて……
「特別サービスしちゃうぜっ!!」
ーー ぶわああぁっ!!
腰回りの頼りない戒めを、トーマスの真ん前で豪快に解き放った!
