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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第18章 揺れる日々

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「咲、今月、ひとりで治療できるかな?」

咲が落ち着いている時を見計らって、声をかけた。
それは、2人で洗濯物を干している時だった。





手伝う前、気持ちが安定していた咲は、笑顔のままで俺に言った。

『春ちゃんが実家に帰っちゃう前に、春ちゃんがやってたこと、お手伝いして覚えなきゃ』

ほっとする反面、無理しているのではないかと、心配なところがある。

『ごめんね、春ちゃん。なんかどうしていいかわからなくて、春ちゃんの服、握っちゃう時あるの……なんか、溺れるって感じになる』

それと、言葉にできない不安なあの時間のことも、言っていた。
いま無理していないか、心配をそのまま咲に尋ねることもできたが、そうしなかったのは咲が頑張ろうとしていたからだった。
心配していることが咲に伝われば、また落ち込んでしまうかもしれない。


そんな危惧もあって。


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