テキストサイズ

優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第12章 ふたりの憧れ

「……咲。治療、頑張ろうとしてくれたの?」

……前回の、春ちゃんに本気で怒られたことを思い出していた。
本心でなくても、『苦しめばいいよ』と言われたこと、そこまで言わせてしまったことを酷く後悔して、なんだか喉の奥が痛むような感覚になる。

「少し……だけ……。ちゃんとしなくちゃって」

わたしが頷くと、優がゆっくりと手を伸ばしてきて、頭を撫でた。

「えらいな」

ちょっと褒められて、恥ずかしくなる。

だって、2人に大事なところを見られるのって……恥ずかしいし、でも治療からは逃れられない。
痛みでどうにかなってしまいそうな感覚は、もう懲り懲りだし、2人にそんな姿はもっと見られたくない。

「……さっさと終わらせるぞ」

わたしが口を動かさなくなったのを見て、優は言いながら立ち上がる。
優と、春ちゃんの部屋のドアを開けて、わたしと春ちゃんを待っていた。

あぁ、嫌だなぁ…………。

渋々立ち上がるけれど、全く足が進まない。
想像すると、足が震えてくる。

「ほら、行くよ。……今日は、恥ずかしくないようにしてあげる」

春ちゃんの言葉に、首を傾げる。
背中を押されて、ゆっくりと歩き出した。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ