
優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第11章 落し物に気づく時
わたしを支えてくれたのは、隣のクラスの列に並んでいた、男の子だった。
同い年なのに、頭1つ分背が高く、しっかりとしたその力に身を委ねる。
「大丈夫?」
彼は、小声で声をかけて、わたしの顔を覗き込んできた。柔らかな前髪が、わたしの顔に当たりそうになるくらいに近い。
瞳に吸い込まれそうになって、どうにか足の力を取り戻して、直立する。
俯くと、お腹に痛みが耐えられないものになっていく。
「だ、だいじょぶ……です……ごめん……なさい」
突然のことと、一瞬忘れていたお腹の痛みが戻ってきて、少し焦っていた。痛みで上手く声が出なくて、苦しい。
名前も顔も知らない子だった。
きっと、わたしのこともよく知らないその子は、それでも咄嗟の判断で体を支えてくれた。
「どこか痛い?」
「おなかが……」
さらに、男の子の後ろに並んでいた女の子も、わたしに声をかけてくれた。
